特集3人材育成について

Environmental Activities 03

ニチモウの人材戦略について

100年以上の歴史を歩んできたニチモウにとって「従業員」は何よりも重要な経営資源=「人財」として位置付けており、企業価値向上の源泉です。漁業・水産業を主たる事業領域としているニチモウグループの強みは各事業分野における専門性、独自性が挙げられます。その強みを支えているのは、従業員一人ひとりがステークホルダーを巻き込んで業務を遂行する力量です。

これらを踏まえた人材戦略は、第137期中期経営計画の基本構想にもある「浜から食卓までを網羅し繋ぐ」のベースとなる『人(従業員)をより強い個に成長させて繋ぐ』ことです。

具体的に求める人物像は、価値観の異なる相手とも協力していける“柔軟性”、新たなビジネスチャンスに果敢に挑戦する“チャレンジ精神”、最後までやり遂げる“タフネスさ”を兼ね備えた人材を育成していくことです。

この考え方は、従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮することで強い個を成長させて、その経験やノウハウを新たな価値を創造する事業に繋げて、中長期的な企業価値の向上、ひいては経営理念である「社会の公器」として業界を牽引していく未来へと繋いでいくということです。

総務部人事チーム 川俣チームリーダー、山田さん総務部人事チーム 川俣チームリーダー、山田さん

現在(いま)までの取り組み・
未来(これから)の取り組み

現在(いま)

未来(これから)

階層別の教育に加え、現在の業務に必要な貿易、PCスキルなど専門的な教育を行っております。
また、e-ラーニングを用いた全従業員向けの教育機会の確保なども行っております。

VUCA※1時代においては、経済・ビジネス・個人のキャリアなどあらゆるものが複雑性を増し、将来予測が難しくなってきており、従前の経験が今後の課題解決には役立たない場合が想定されます。そのためにも従業員一人ひとりがスキルアップし成長(強い個)していくことが不可欠です。その施策として従業員に必要な能力を可視化するとともに、リスキリングを推し進め、事業を横断して活躍できる人材の育成に繋げてまいります。また、明確な育成プランを作成し、その進捗・達成状況を確認してまいります。

教育(リスキリング)

少子高齢化、働き方改革、新型コロナウイルス感染症など、ニチモウを取り巻く事業環境は大きく変わっています。そのような状況下で法令や時代のニーズに沿った育児・介護への対応、時差出勤制度の導入など、より良い労働環境の実現に努めております。また、従業員との対話やアセスメントなどを通じて問題、課題の洗い出しを行っております。

少子高齢化にともない、生産年齢人口の減少が顕著な国内において、より効率的な業務が遂行できる労働環境が必要になります。今後も選ばれる企業であるためにも、納得性の高い人事制度の導入、ジョブローテーションやグループ間交流により幅広い知見の習得など、新たな価値を創造できる労働環境の整備を行ってまいります。

労働環境

育児世代への休職制度、男性従業員の育児休職取得の推進などを積極的に進めております。
また、女性従業員の能力を発揮できる諸制度改定の検討を行っております。

生産年齢人口が減少していくなかで、企業の成長の観点においてもダイバーシティが重要な課題です。その中でも女性を主たる戦力として事業運営に組み込んでいく体制作りが重要になります。それに向けて、毎年の採用活動における女性採用率および女性管理職の比率を引き上げてまいります。

女性活躍

従業員の安全な労働環境の確保に努めるべく、産業医、看護師らの専門家と連携して、社員の心身の健康状態を把握し、問題のある場合には丁寧なフォローを行っております。また、労働時間管理システムにより長時間労働を未然に防止するなどの施策を行っております。

重要な経営資源である「人財」であり続けるために、従業員の健康維持・増進活動に対する積極的な支援と健康作りの施策を推進してまいります。健康管理についても体系的な運営を行い、「健康経営優良法人」の取得を目指してまいります。従業員の健康こそが企業価値を向上させ、「未来」へ繋がっていくものと考えております。

健康管理

強い個を事業・未来へ繋ぐ

強い個が団結し、強い組織の輪を
広げることで連携し、企業価値向上へ

重要課題とKPIについて

2030年までに当社が達成すべき人材育成の基盤整備における重要な課題として4項目を掲げ、それに対するKPIを設定しました。
これらKPIの進捗状況は、取締役会において監督を行ってまいります。

重要課題 KPI
1 人事上の情報、施策の可視化 ISO30414の認証取得
⇒社内外に対する人的資本のガイドラインの制定
2 グループ全体としてのビジョン共有 理解度 100%
⇒ニチモウグループ内での経営理念・ビジョンの発信(ER※2強化)
3 人材定着、育成プランの作成 離職率 5%以下
⇒定年を除いた毎年の離職率を抑制、育成プランを作成し、その達成状況をモニタリング
4 ダイバーシティ 女性採用比率(50%)※3、女性管理職比率(10%以上)、男性育児休暇取得率(100%)

長期ビジョン達成とロードマップ

「浜から食卓までを網羅し繋ぐ」を具現化する人材を育成するために、注力するポイント毎に区分けし、
二つのSTAGEで中長期的な人材の育成を行ってまいります。

2023年、現状把握。全社アセスメント、若手社員面談などを通した現状における課題・問題の洗い出し。STAGE1、2025年まで。新たな施策の導入。長期的に求める能力の明確化、新たな教育機会の提供、人事評価制度の見直し、社内DX化に向けた取り組み。現在の人に対する教育の機会の提供を含め、今後ニチモウグループに求められるスキルを明確にし、新たな施策を導入していく期間といたします。STAGE2、2028年まで。人材の新たな活用。女性管理職、グループ間交流、ジョブローテーション制度。ジョブローテーション制度や、グループ間での人員交流を活発化させて、個々の知識、経験をグループ全体に広めていく新たな仕掛け作りを行ってまいります。2030年まで。未来へ繋ぐ。「浜から食卓までを網羅し繋ぐ」具現化できる人材を創出。
  1. ※1 VUCA…Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字。
  2. ※2 ER…Employee Relations。企業の従業員や労働組合に対する広報活動。
  3. ※3 一般職社員含む。

次世代社員が語る
ニチモウの
現在と未来

ニチモウの社風、私の仕事
新入社員 海洋事業本部 研究開発室 落合さん

落合
お客様と連携しながら商品開発を進めている点がニチモウの魅力だと感じています。私は海洋事業本部に所属し、山口県下関市で漁網の設計や開発に携わっていますが、大型の実験水槽を使った模型実験の様子を漁師さんに見ていただき、意見を伺うことで、お客様のニーズに合わせた漁具の開発をします。環境に配慮した生分解性の資材などでも、漁師さんの意見を反映しています。

中山
ニチモウは「やる気があるのならやってみな」というように、チャレンジする人の背中を押すことを大切にしてくれる会社だと思います。私は化成品営業部に所属していますが、上司には「今、こういう仕事をしていて、お客様の反応はこうです。そこで、こういうチャレンジをしたいと思います」という具合に報告し、意見をもらいます。チーム内で助言し合える関係にも魅力を感じます。チームの仲間と保養所に出向き、意見交換をすることもあります。

若手社員 機械・資材事業本部 機械中央営業部 尾井さん

尾井
ニチモウの従業員数は200名を少し超えるということもあり、風通しのよさを感じます。私は機械中央営業部で食品機械の販売を行っていますが、部署内の風通しに加え、部署間の連携も密に行われています。例えば中山さんのいる化成品営業部とも連携し、段ボールや食品トレー、包装資材の販売をしたり、食品営業部の人と連携してホタテの貝柱を販売したりすることもあります。

田野口
尾井さんのおっしゃるとおり、部門間で連携を図りながらさまざまな商材を扱い、かつワールドワイドな業務を展開しています。私は財務部に所属していますが、海外で買い付けた原料の支払いを請け負うこともあり、業務を通じていろいろな国の制度を知ることができます。国内だけでなく海外の業務も経験することができることにも魅力を感じます。

活躍できる職場環境
中堅社員 管理部門 食品品質管理室 土田さん

土田
仕事を長く続けていくうえでは、従業員のワークライフバランスに対する会社側の理解や配慮が不可欠です。私の所属は食品品質管理室ですが、2023年3月まで育児休暇制度を利用していました。 こうした制度を使えることには安心感があります。最近では男性の育児休暇取得も始まりましたが、育児休暇取得の壁を越えていくには会社からの支えも必要です。

岩目地
土田さん同様、私も子育てと仕事を両立させています。私は食品事業本部で営業を担当していますが、仕事量は以前と変わらずにやることができています。チームで支え合う体制が整っているからです。私のチームでは連携が進んでいて助かっていますが、各チームで温度差があるようにも感じられ、その点には課題があるように思います。

中堅社員 管理部門 財務部 田野口さん

落合
私の職場では仕事と育児を両立させている女性がいないこともあり、自分が将来、それをどのように両立させていけるのかをイメージすることができず、その点では不安があります。私は現場に近いところで仕事をすることにやりがいを感じているので、仕事と育児を両立させるために、自分のやりたい仕事が制限されるようなことがあると嫌だなという気持ちもあります。

田野口
職場に女性が増え、女性がもっと活躍しやすい職場環境が整備されていくと良いと思っています。男性の管理職のもとでは、女性が1~2名しかいない部署での発言は、どうしても少数意見として捉えられがちです。女性管理職が増えていくことで、女性の声が取り上げられる機会が増えたり、目指すべき先輩像がイメージできることで、モチベーションアップに繋がると思います。

ニチモウの未来、
未来へのチャレンジ
中堅社員 食品事業本部 第二営業部 岩目地さん

岩目地
水産資源には限りがあり、さまざまな要因で、その供給も激しく変動します。その中で、良い品質の水産物を安定的に食卓に届けることがニチモウの使命だと思います。食品事業の柱である、すり身、カニ、助子、冷凍魚、加工品を食卓にお届けすることに加え、今後は新しいものにもチャレンジすべきだと思います。そうしたチャレンジに対して私自身も主体的に関わっていきたいと思います。また、ニチモウブランドの価値を最終消費者にもっと知っていただけるよう、今後はもっと積極的にアピールすべきだと思います。

中山
私は建材用のフィルムを担当しているのですが、日本の少子高齢化がさらに加速し、新築住宅着工件数の減少が見込まれるなかで、何らかの手を打っていく必要があります。ニチモウが提供するフィルムに対するニーズがなくなることはないと思いますが、今後増加していく医療・介護施設向けに積極的に展開していくなど、打開策はいくつもあるはずです。ニチモウが描く「浜から食卓まで」をカバーするサイクルのなかには住空間も存在します。例えば食品工場の内装まで任せてもらうなど、ニチモウの強みである部署間の連携で、新たな商品づくりができれば良いと思っています。

中堅社員 機械・資材事業本部 化成品営業部 中山さん

尾井
機械の販売に携わっているので、お客様が深刻な人手不足に陥っていることを肌で感じます。省人化、機械化に対するニーズは今後ますます増えていくと思われます。ニチモウがこれまで以上にお客様のニーズに寄り添い、課題を解決していくためには、ニチモウ自体がM&Aなどにより機械メーカーの機能を獲得し、機械についてのノウハウを駆使してお客様と対話することが必要かもしれません。高度なノウハウを提供し、お客様との信頼関係を高めることができれば、機械以外のさまざまな仕事のチャンスの獲得にもつながるのではないでしょうか。

土田
ニチモウの強みは、少数精鋭で個人の専門性が高い点、また部門間の連携がうまく機能している点にあると思っていますが、個人の専門性が個人プレーの範囲にとどまっていて、それを継承したり、組織としての知見として扱ったりすることが、まだまだできていないように感じられます。横の連携はできている反面、縦の連携が不十分なのです。10年後のニチモウが、こうした点の克服ができれば、ニチモウの中に点在する「強み」を結集した製品や事業展開ができていくのではないかと思います。そのために今後、私自身も力を尽くしたいと考えています。