財務戦略

Financial Strategy
資本効率の向上、企業価値の向上に向けて、不断の努力を続ける 取締役 専務執行役員 社長補佐・経営全般担当 八下田 良知

資本効率の向上に向けて

東証プライム市場を選択したニチモウにとって、上場維持基準への適合に向けた取り組みは重要です。
2024年3月期の資本政策としては、当初の計画通り、新株予約権の発行により約20億円の増資を完了し、発行済株式総数は約450万株となりました。また2023年11月には、新NISA制度の開始を見据えて、株式分割も実施し、現在の発行済株式総数は約900万株となっています。足元での株価を見る限り、こうした資本政策は資本市場からも概ね評価されていると捉えています。

1. 流通時価総額の向上

引き続き、企業価値の向上と、資本市場からの適正な企業価値評価の獲得により流通時価総額を高め、東証プライム市場の上場維持基準である100億円をクリアすることを重要な課題として捉えています。足元の株価水準(2024年3月)が続けば基準はクリアできるものと見ていますが、もちろん経済の外部要因や資本市場の状況を注視する必要があり、適正株価の維持・向上に向けて注力します。

2. 営業キャッシュ・フローの改善

引き続き、営業キャッシュ・フローの改善に取り組み、資本コストを超える利益を生み出すことに注力することで、財務体質の強化を図ります。

3. IR活動の積極展開

ニチモウの企業価値に対する資本市場からの適正な評価(適正株価)の獲得に向けてこれまで以上にIR活動を積極化させます。機関投資家向けには年2回の決算説明会を開催しているほか、個人投資家向け説明会も開催しており、ニチモウグループの事業、ビジネスモデルに対する認知度の向上に努めています。
コーポレートサイトの充実にも力を注いでおり、タイムリーかつ質の高い情報開示を心がけています。

ニチモウではこうした取り組みを通じて、企業価値の持続的な向上、資本市場における適正な企業価値評価の獲得に努めます。またこれらを進めることが、我々の最大のミッションであると認識しています。

2024年3月期の成果と2025年3月期の見通し

2024年3月期(以下、当期)は、現在取り組んでいる「第137期中期経営計画(Toward the next stage)」(以下、現中計)の最終年度目標を1年前倒しで達成する見通しを期初に立て、連結売上高1,310億円、営業利益31億円、経常利益35億円という目標を掲げました。ただはじめてみると、コロナ禍からの経済活動の正常化は見られたものの、長引くウクライナ情勢、中東情勢の緊迫化といった地政学的リスクの顕在化により、厳しい収益環境が続きました。

こうした事業環境のもと、海洋事業については養殖事業などが順調に推移したものの、食品事業の収益環境が悪化しました。具体的には、食品事業におけるすり身原料の評価損、子会社による不良在庫の増加が顕在化しました。その結果、当期の連結売上高は1,277億円、連結営業利益は20億円と減益決算となりました。
このように当期の業績面は踊り場のような位置付けとなりますが、2025年3月期(以下、来期)は、当期中に発生した負の遺産の処理が進み、また食品事業の原料相場も落ち着きを取り戻すと見ています。
当期に投資キャッシュ・フローで得た約30億円のキャッシュ・インについては、新たな投資に振り向けていく考えです。これらにより、来期は現中計の最終年度目標を超える目標値を掲げたいと考えています。
来期の業績回復を支える核となるのが海洋事業です。サステナブルな取り組みでもある陸上養殖について、初年度である当期は300トンを生産しました。その次に掲げる生産目標は3,000トンですが、まずは来期1,500トンを目標に取り組みます。九州で展開している陸上養殖プロジェクトについては、九州電力㈱とのコラボレーションで進めていますが、最終目標の3,000トンの実現に向けて100億円程度の先行投資が必要となります。ニチモウはこのうち4割相当を拠出しますが、これにかかる資金は、当期に得た財務キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローを活用します。ニチモウグループの陸上養殖は他社に先駆けた展開ができており、今後の展開についても期待を寄せています。

中期経営計画の進捗と次期中期経営計画の展望

現中計では3ヵ年の累計で100億円の設備投資計画を立てて推進しています。具体的には、陸上養殖の事業化のほか、バイオマス漁網の実用化、水産物加工の安定供給体制の構築、新たなM&Aなどを想定しています。投融資にかかる長期的な資金としては、設備投資・事業投資計画を立て、市場金利動向や既存長期借入金等の返済時期を総合的に勘案しながら、流動性の確保に努めています。
既に公表している長期ビジョン・中長期経営目標としては、売上高1,500億円、経常利益45億円を掲げています。この数値目標については、既存事業の拡大だけで達成していくことは難しいと考えています。現在取り組んでいる新規事業を確実に軌道に乗せること、M&Aなどにより新たな事業を獲得していくことが必要となります。
事業別では、食品事業はやはり原材料の市況に左右されることが多く、市況に左右されにくい収益構造を確立していくことが課題となります。具体的には、加工食品を増やしていくということになります。
海洋事業については、これまでの取り組みを更に進めていきます。地球温暖化が進み、昔のように魚が潤沢に獲れる時代ではなくなってくることを想定し、養殖や環境にやさしい資材、船の省力化などに向けた研究開発を進めていく必要があります。
機械事業は成長が期待できる分野ですが、更に伸ばすには、海外への輸出を伸ばしていく必要があります。そのために海外での販売パートナーの探索も含め、海外展開の可能性を追求します。
こうした展開を支えるべく、現中計期間中での営業キャッシュ・フローの確保が必要不可欠と考えており、更なるキャッシュ・フローの拡大と資本効率の向上によって、企業価値、株主価値を高めていくことが急務となります。
次期中計の展開を含め、ニチモウグループの企業価値向上に向けた取り組みは今後も間断なく進んでいきます。担当役員として、決して手を緩めることなく改革を進めていきます。

ニチモウグループの今後にご期待ください。

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