財務戦略

Financial Strategy

キャッシュフローの拡大と
資本効率の向上により
企業価値を高める

取締役 専務執行役員
社長補佐・経営全般担当

八下田 良知

営業キャッシュフローの安定的な拡大に向け、既存事業の拡大と新規事業を創出し、さらなる事業拡大を見据えた増資を進めながら、株主価値の拡大も追求します。

資本戦略について

ニチモウの企業価値を持続的に向上させることが、担当役員としての私の最大のミッションです。
東証プライム市場を選択したニチモウにとって、上場維持基準への適合に向けた取り組みは喫緊の課題です。
現在、課題解決に向けた諸施策を推進しており、計画は着実に前進しています。

1. 流通時価総額の向上

企業価値の向上と、資本市場からの適正な企業価値評価の獲得により流通時価総額を高め、東証プライム市場の上場維持基準である100億円をクリアすることが当面の大きな課題と捉えています。
適正な企業価値評価を獲得するうえで、ニチモウが今後、持続的に利益を拡大させることができることを資本市場に示していくことが欠かせません。現在取り組んでいる3ヵ年経営計画「第137期中期経営計画(Toward the next stage)」(現中計)の着実な伸展が大前提となります。2023年3月期の売上高では、機械事業については大型案件の一巡で減収となったものの、食品・海洋事業がけん引して、ニチモウ全体では前期比増収となりました。一方、営業利益については、大型設備投資を実施した(株)ヤマイチ水産新工場でのフィッシュミールの増産などが海洋事業での養殖餌料販売増につながったものの、先にご説明した機械事業の大型案件の一巡の影響などにより、前期比減となりました。引き続き、事業の安定拡大に向けた新規事業の開拓、グループ内事業連携の強化に注力します。また、陸上養殖の事業化や海外事業の更なる強化に努めます。
近年業績が安定してきたこともあり、第三者割当による新株予約権(行使価格修正条項付)の発行とファシリティ契約の締結を行いました。権利行使の進捗による資本調達により自己資本を拡充させ、財務の健全性を強化することが、将来に向けた事業投資を行っていくうえで必要であるとの判断に基づいたものですが、発行株式数を増やすことで株式の流動性を高めながら、一方で企業価値を高めて適正な株価を確保していくことの双方を進めていきたいという思いも込めています。資本効率の改善に向けては、財務体質の改善を踏まえて、ROAやROICを意識した最適な資本構成に努め、キャッシュフローマネジメントの高度化を進めてまいります。

2. 営業キャッシュフローの改善

資本コストの面を考えれば、それを上回る利益をあげていくことはもちろんのこと、財務体質の強化に向けて営業キャッシュフローを改善させていく必要があります。
前提となる当社の事業特性を踏まえたキャッシュフローの特徴ですが、食品事業は水産物の漁獲時期が春先から秋口までに集中するため買付が先行します。
その後、年末にかけて買い付けた水産物の販売を進めることにより資金を回収していきます。一方で海洋・機械・資材の3事業は仕入から資金回収までのサイトは比較的短いことにより、食品の長期にわたる回収サイトを埋めるようなバランスを意識した対応を行っています。
これらの特徴を踏まえ、各事業における回収サイトの短縮や在庫の圧縮を含めたキャッシュフローマネジメントを行うことで営業キャッシュフローの改善に努めていきます。
2024年3月期については金融緩和によるインフレや水産資源の高騰など営業キャッシュフローへのマイナス要因が多くありますが上記の施策に則り、キャッシュフローマネジメントをさらに高度化していく考えです。

3. IR活動の積極展開

ニチモウの企業価値に対する資本市場からの適正な評価(適正株価)の獲得に向けて、IR活動を本格化させています。ニチモウの事業に対する認知度向上の観点から、決算説明会は、機関投資家向けに年2回実施しているほか、2023年3月期からは個人投資家向け説明会を実施しています。さらに、当社の魅力や情報をより分かりやすくお伝えし、幅広い投資家に魅力を認知していただくために、コーポレートサイトもリニューアルしました。
また情報開示の充実としては、IRポリシーのもとに企業情報を積極的かつ公正に開示していく方針を打ち出し、これを実践しています。

投資計画の進捗、資金の源泉

現中計では3ヵ年で合計100億円の設備投資計画を立てており、陸上養殖の事業化、バイオマス漁網の実用化、水産物加工の安定供給体制構築、M&Aを進めていく考えです。
陸上養殖の事業化では、事業会社「フィッシュファームみらい(同)」を通じて、九州電力(株)敷地内に九州最大のサーモン陸上養殖工場を立ち上げました。開業当初は年間約300tの生産能力となり、規模の拡大を順次進め、約3,000tの生産能力の確保を視野に入れています。バイオマス漁網の実用化では、PLA(トウモロコシ由来のポリ乳酸)を用いたバイオマス漁網の研究開発を進めており、2025年3月までの製品化を見据えています。水産物加工の安定供給体制構築では、(株)ヤマイチ水産の新工場が2022年6月に完工・生産を開始、また、カニ・ホタテを取り扱っている紋別事業所と(有)北海道マリンサービスは管理および製造体制を強化するため、2023年4月からオホーツクニチモウ(株)として新たに始動しました。
なお、投融資にかかる長期的な資金については、設備投資・事業投資計画に基づき、市場金利動向や既存長期借入金等の返済時期を総合的に勘案し、流動性の確保に努めています。また運転資金については、事業上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、必要な資金については銀行借入やコミットメントラインの設定により流動性を確保しています。

次期中期経営計画を見据えて

現中計に基づく取り組みについては、先にご説明した取り組みを進めることで、最終年度の目標である売上高1,300億円、経常利益35億円の早期実現を目指しますが、その次のステージを見据えた動きも視野に入れています。既に公表している長期ビジョン・中長期経営目標では売上高1,500億円、経常利益45億円を掲げていますが、この数値目標を既存事業の拡大だけで達成していくことは難しいと考えています。現在取り組んでいる新規事業を確実に軌道に乗せること、さらにはM&Aなどにより新たな事業を取り込んでいくことも必要となります。
現中計期間中での営業キャッシュフローの確保は、そのための布石としても必要不可欠だと考えています。
さらなるキャッシュフローの拡大と資本効率の向上によって企業価値、株主価値を高めていくことに、担当役員としてこれまで以上に力を尽くす所存です。

中期経営計画:KPI(2023年3月期~2025年3月期)

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