環境への取り組み

Environmental Activities

方針・考え方

気候変動への懸念、天然資源の持続性、自然災害の拡大など私たちを取り巻く環境課題はより大きく多様化し、企業には課題解決力が強く求められています。このような環境下で「豊かで健康な生活づくり」に「食」から「住」の分野までサポートする当社では、食品・海洋・機械・資材の各事業において、自然環境および環境資源に配慮し、確かな技術とサービスで持続可能な社会の実現に貢献しています。

気候変動への対応
TCFD提言に基づいた情報開示

TCFD提言への賛同

ニチモウでは、2022年4月からスタートした第137期中期経営計画で「サステナブル経営」を推進しています。その具体的な取り組みの一つとして、気候変動問題を重要な経営課題として認識し、2023年4月にTCFD提言への賛同を表明いたしました。当社は、TCFDが開示を推奨する「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」に沿って適切な情報の開示を行っていきます。また、今後においても財務に及ぼす影響の評価など、さらなる開示情報の拡充に努めていきます。

ガバナンス

当社は「サステナブル経営」の推進にあたり、2022年10月にISO統合マネジメントシステム(ISO9001+14001)を認証取得し、品質および環境配慮を重視した取り組みを行っております。この取り組みは経営陣のみならず、各部門単位で運営を行うことで、社員一人ひとりのサステナビリティに対する意識を醸成するもので、全体で持続可能な社会の実現に貢献するものです。
このISO統合マネジメントシステムの事務局長として、専務取締役がISO管理責任者を担い、執行役員10名(取締役含む)で構成された執行役員会で、毎年4月に品質および環境に配慮した企業活動に対する目標設定を行い、四半期ごとに(計4回)進捗確認を実施。ISO事務局からのマネジメントレビューで代表取締役社長への報告を実施しています。今後、取締役会への報告体制の構築を目指し、サステナブル経営の全社横断的な推進に取り組んでいきます。

リスク管理

当社が直面する具体的なリスクの識別・評価、方針の決定は、「内部統制委員会」がその役割を担っております。また、万が一問題が発生した場合の対応として「危機管理のガイドライン」を定め、不測の事態が発生した場合でも迅速な対応を行い、損失の拡大を最小限に防止する体制を整備しております。
「内部統制委員会」は取締役会の監督のもと、代表取締役社長を委員長として年4回開催しております。気候変動が事業に与えるリスクと機会の影響度評価を2023年から開始しました。財務に及ぼす影響の開示を含め、今後取り組みを拡充いたします。

戦略

TCFDが提唱するフレームワークに則り、シナリオ分析の手法を用いて、将来的に気候変動が当社事業にもたらす影響を特定・評価しました。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照しています。

リスク・
機会種類
リスク・機会要因項目 事業インパクト 時間
発生
確率
影響
総合
評価
影響額






政策・
法規制
カーボン
プライシングの導入

カーボンプライシングが導入された場合、化石燃料の調達コストが増大する可能性がある。

定量的財務影響の算出根拠

2030年度、2050年時点を想定したScope1排出量に1t-CO2あたりの炭素税価格を乗じて試算

中期 1.5℃シナリオ
試算結果
2030年 0.8億円
2050年 1.4億円
再エネ調達比率に
対する規制の強化
再エネ調達比率に関する規制が強化された場合、再生エネルギー開発コストや、Jクレジット、グリーン電力証書などの調達コストが増加する可能性がある。

定量的財務影響の算出根拠

SBTの1.5℃水準を想定し、2030年時点のScope2排出量の再エネ証書を購入した場合の試算

中期 1.5℃シナリオ
試算結果
2030年 0.2億円
化石燃料由来の
プラスチックに
対する規制の強化
化石燃料由来のプラスチックに対する規制が強化された場合、機資材に使用しているナイロン、ポリエステルなどプラスチック素材の調達コストが増大する可能性がある。 中期
技術 気候変動に対応した
養殖技術の主流化
気候変動により、海水温の上昇、海洋生物の回遊ルートの変更、海洋の酸性化などにより漁獲高の大幅な減少という影響を受ける可能性がある。その場合気候変動に対応した養殖技術が必要となるが、当社がこうした技術への対応に乗り遅れた場合、生産コストが増大する可能性がある。 短期
市場 環境配慮型製品需要の
高まり
今後、環境に配慮した海洋資材調達ニーズが高まる可能性がある。当社が適した製品を供給できない場合、環境配慮を証明できない水産物・漁網漁具・機資材の需要減退による売上・収益の減少や、市場シェアを失う可能性がある。 中期
今後、環境に配慮した養殖用種苗・餌料調達ニーズが高まる可能性がある。当社が適した製品を供給できない場合、環境配慮を証明できない商品の需要減退による売上・収益の減少と、市場シェアを失う可能性がある。 中期




急性物理的
リスク
異常気象の
激甚化
主要な養殖・加工施設の一部は沿岸部にあり、これらは海抜2~5m程度に存在する。気候変動により台風、洪水等の発生頻度が高まる場合、設備損壊等による稼働停止などのため、売上・収益が減少する可能性がある。

定量的財務影響の算出根拠

過去の自然災害に伴う休業等による売上損失額に対して、洪水発生頻度を乗じて試算

短期 2℃シナリオ試算結果
~2050年 7.8億円
4℃シナリオ試算結果
~2050年 23.5億円
慢性物理的
リスク
気候変動による
生育環境の変化
水温上昇など海洋環境の変化に伴う天然魚・海面養殖魚の漁獲・生産量の減少により売上・収益が減少する可能性がある。 短期

製品および
サービス
認証済み製品や
低炭素製品への
嗜好変化(陸上養殖)
温暖化による水温変化などの外部環境に左右されず、省エネ・エコシステムで安定的な生産を行う陸上養殖による売上・収益の増加の可能性がある。 短期
環境配慮型機資材への
嗜好変化
環境配慮認証を得た漁獲水産物・養殖魚や環境配慮型の機資材における需要向上による売上・収益の増加の可能性がある 中期
低炭素製品への
嗜好変化
(バイオマス漁網)
当社では、石油由来の従来品と比較して、製造・廃棄時のCO2排出量の約50%を削減するバイオ・生分解性素材を用いた海洋資材開発に取り組んでいる。これらはプラスチックに関する規制が強化された場合、売上・収益の増加の可能性がある。 短期
低炭素製品への
嗜好変化
(リサイクル
プラスチック)
当社では、廃棄漁網のリサイクルネットワークの構築に取り組んでいる。ここでは高品質の再生ペレットの製造も行うため、プラスチックに関する規制が強化された場合、売上・収益の増加の可能性がある。 短期
市場 ブルーカーボン
市場への参画
藻場造成における資材の提供やコンサルティング、ブルーカーボンクレジットの販売による売上・利益の増加の可能性がある。 中期
2021年度
(t-CO2
Scope1 事業者自らによる温室
効果ガスの直接排出
4,533
Scope2
(マーケット基準)
他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出 6,109
Scope2
(ロケーション基準)
5,287
Scope1+2(マーケット基準)小計 10,642
Scope1+2(ロケーション基準)
小計
9,820
  • ※GHGプロトコルに則り、Scope1,2算定を実施。Scope1,2範囲としては、連結子会社を含む国内主要拠点を対象に算定。事業所、営業所はScope1,2算定対象から除外しています。
  • ※フロン類の排出は今回のScope1算定に含まれておりません。
  • ※Scope3を含めた算定は今後の課題と認識しており、引き続き算定範囲の拡大に取り組んでいきます。

指標と目標

当社は気候変動への対応に関する「指標と目標」の設定を検討しており、その一環として、温室効果ガス排出量の把握に着手いたしました。2021年度の消費エネルギー実績をもとに、ニチモウおよび主要な連結子会社を範囲として、Scope1(燃料)とScope2(電力)の算出を実施。内訳は右表の通りです。
引き続き、算定範囲の拡大および、気候変動対応の拡充に取り組んでいきます。

水産資源の保全

マリンエコ・ラベル(MEL)の取得

当社は水産資源と生態系の保全・トレーサビリティの確立を通じて、海洋環境に配慮した、持続的で安全な食の提供に努めています。その一環として宮城県産養殖銀鮭加工品の流通加工段階において、マリン・エコラベル・ジャパン協議会が運営するMEL認証を2021年5月に取得しました。
マリン・エコラベル・ジャパン(MEL)は、将来の世代にわたって最適な利用ができるよう資源と生態系の保全に積極的に取り組んでいる漁業や養殖業を認証し、MELロゴマークを貼付して流通させるものです。また、使命として「日本の水産業の新たな発展とSDGs達成に貢献し『海の豊かさを守る』ことに資する」を掲げています。世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI)から承認されたMELは、事実上の国際規格として、世界の大手小売業等の調達基準として採用されており、国際的な評価の向上や一層の輸出促進に寄与することが期待されています。
当社グループでは、長年取り組んでいる宮城県産養殖銀鮭において、(株)ニチモウマリカルチャーが生産段階で2020年4月に認証取得しており、当社も認証取得したことで、生産と販売が一体となって持続可能な水産物を供給する体制を実現しています。

MSC CoC認証の取得

MSC認証とは、水産資源と環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業に対するMSC漁業認証と、MSC認証漁業で獲られた水産物が確実に消費者に届くようにするためのサプライチェーンに対するMSC CoC認証から成ります。MSC「海のエコラベル」が付いた水産物は、水産資源や環境に配慮しているとして、独立した審査機関に認証された漁業で獲られたものになります。
当社ではMSC認証の助子、カニ、凍魚の取り扱いのためMSC CoC認証を取得し、原料や加工品として供給しており、それらをとおして水産資源と環境に配慮した持続可能な水産物の提供に貢献しています。

省エネルギー設備・環境配慮設備の導入

熱交換式フライヤーを用いた厚揚げ製造機

当社は環境に優しい省エネルギー設備・環境配慮設備の導入を進めています。例えば厚揚げ製造ラインでは、豆腐を揚げるフライヤーに熱交換式を採用することで、従来からある直火式と比較して40%以上も熱効率に優れ、ランニングコスト削減・省エネルギー化およびCO2排出量削減を実現しています。
また、調理時に発生する水蒸気や油煙を除去する装置を供給し、工場外に排出される臭気を軽減させることで地域の生活環境の保全にも貢献しています。