特集1

海洋環境の保全に向けて

Special Feature 01

近年、漁業を取り巻く環境は過剰漁獲や気候変動、海洋汚染などにより水産資源の減少が進み、持続可能性の確保が大きな課題となっています。
当社はそのような課題に対し、持続可能な漁業の実現を目指し、環境に配慮した取り組みの推進に加え、水産物の高付加価値化を図るスキームの構築などを通じて、持続可能な漁業の実現と地域社会への貢献に取り組んでいきます。

The Spread of Biodegradable Materials

環境に配慮した漁具資材の開発と供給.1
生分解性資材の広がり

左:磯焼けした海底、右:藻場再生の様子

当社は、海洋環境への負荷低減の実現に向け、バイオ・生分解性資材の開発および普及を推進しています。
当社が開発したバイオ・生分解性資材は、従来資材と比較して海藻の初期成長速度が向上する副次的効果が確認されており、環境配慮に加え、生産性向上という新たな価値創出に寄与しています。

左:磯焼けした海底、右:藻場再生の様子

コンブ養殖の様子

岩手県釜石市では、ウニの食害などによる磯焼け対策として本資材が活用されています。具体的には、磯焼けした藻場周辺においてバイオ・生分解性のロープ等を用いてコンブを養殖し、その後海底に移動させることで、ウニの摂食対象をコンブへと誘導します。これにより、磯焼けしていた海域におけるアカモク等の藻場再生が促進されるとともに、ウニの身入り改善を通じた漁業の安定化にも繋がっています。

バイオ・生分解性資材におけるモズク養殖の様子

沖縄県石垣市においては、本資材を用いた漁網でもずく養殖を展開しており、当社グループの販売機能を活用しながら、環境配慮型商品として外部サイトでの販売を進めるなど、市場の拡大にも取り組んでいます。
このほかにも当社は、長年にわたり培ってきた水産分野の知見と技術開発力を活かし、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進する「長期海洋生分解性プラスチック評価技術開発事業」に参画しています。本事業では、官民連携のもと、新たな海洋生分解性素材の評価基準の策定および資材開発にも取り組んでいます。

設置された獣害ネット

更に、化成品営業部との連携により、海洋用途にとどまらない陸上分野への展開も進めています。愛知県では、豊栄工業(株)、トヨネン(株)、(株)市駒製網と連携し、生分解性プラスチック原料を用いた防獣ネットを設置しました。
林業分野では、作業員不足や高齢化を背景に、資材の設置・撤去作業の負担増加が課題となっています。一方、バイオ・生分解性資材は万が一土中に残存しても分解される特性を有しており、撤去作業の省力化と環境負荷低減の両立が可能です。2025年9月には国内初の実証評価を実施しており、全国展開が期待されています。
今後は、本資材の副次的効果を活かしながら、各海域における藻場造成の促進に取り組むとともに、顧客や地域社会との連携を強化し、高付加価値製品の開発や持続可能な海洋環境の再生を目指します。加えて、洋上風力発電をはじめとする新たな海洋ビジネスとの連携による事業領域の拡張や、陸上用途における普及にも継続的に取り組んでいきます。

Towards Supporting the Creation and Widespread Adoption of Blue Carbon

環境に配慮した漁具資材の開発と供給.2
ブルーカーボンの創出支援と
普及拡大に向けて

海苔養殖の様子

当社は、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げ、世界的な課題であるCO2排出量の削減に向けた取り組みを推進しています。
水産分野においては、これまで培ってきた技術およびノウハウを活かし、海洋生態系が有する炭素吸収機能に着目したブルーカーボンの創出・普及を通じて、その実現に貢献しています。

海苔養殖の様子

海苔システム船

宮城県亘理町では、ブルーカーボンクレジットの創出支援に取り組みました。当社は、海苔養殖分野において資材供給力や知見を有しており、地元の漁業者の方からの相談を契機に連携を開始しました。約2年にわたり現地での実証試験や測定を重ね、海藻によるCO2吸収量の算定手法の整理に加え、申請プロセスの構築など、制度対応を含めた包括的な支援を実施しました。その結果、ブルーカーボンクレジットの申請は受理され、2026年3月には笹川平和財団ビル11階国際会議場(虎ノ門)において、JBE(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合)より認証授与が行われました。本取り組みは、地域における環境価値の可視化と新たな収益機会の創出に寄与しています。
また、当該ブルーカーボンクレジットを2026年6月に購入することで、創出された環境価値の循環を促進し、ブルーカーボン市場の形成および普及拡大にも貢献しています。これにより、地域主体の取り組みが環境面のみならず、経済面においても持続可能な仕組みへと発展しています。
今後は、資材提供力と認証取得支援のノウハウを一体的に提供できる強みを活かし、海苔養殖にとどまらず、他地域への展開を推進していきます。ブルーカーボンの普及拡大を通じてカーボンニュートラルの実現に寄与するとともに、海藻養殖によるCO2の固定を軸とした持続可能な海洋環境の構築を目指していきます。