特集2

未来を見据える養殖事業

Special Feature 02

水産物の需要は世界的に拡大を続けている一方で、地球温暖化に伴う海水温の上昇や海洋環境の変化、資源量の不安定化が進んでいます。さらには各国における漁獲規制の強化など、水産業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。これらの課題は、従来の漁業のあり方だけでは対応が難しく、持続可能な資源利用と安定供給の両立がこれまで以上に求められています。
当社グループはこのような課題に対応するため、長年培ってきた養殖における知見を活かし、変化する海洋環境や社会的要請に柔軟に対応しながら、水産物の安定した供給体制の構築に挑み続けていきます。

As A Leading Aquaculture Company

養殖のリーディングカンパニーとして
陸上養殖システムの内製化に向けて

当社は、水産資源の持続可能な利用と安定供給体制の構築に向けた取り組みの一環として、岩手県久慈市において、循環式陸上養殖(以下、RAS(Recirculating Aquaculture System))の内製化を目的とした実証事業を開始しました。
RASは水を循環・浄化しながら陸上で水産物を養殖する方法であり、海水温の変動や赤潮、荒天など外部環境の影響を受けにくい点が大きな特長です。限られた水資源を効率的に活用しながら、年間を通じた安定生産と環境負荷低減を両立することが可能な養殖技術として、近年国内外で注目が高まっています。本実証では、2026年3月下旬に30トン規模の水槽2基への注水および試運転を開始し、同年5月には水質・循環機能の安定稼働を確認しました。その後、トラウトサーモンを投入し、現在は初期生育段階から成魚生育段階まで、成長フェーズごとの養殖試験を並行して実施しています。本取り組みは、当社が久慈市において長年培ってきた海面養殖事業の実績を基盤に展開しています。現在は未使用となっている冷凍工場施設を有効活用しており、既存インフラの活用によって、建設時の環境負荷抑制も実現しています。また将来的に、陸上で育成した種苗を迅速に海面養殖生け簀へ移行できる体制を構築することで、輸送時のストレスやへい死リスクの低減を図り、養殖工程全体の効率化の実現を目指しています。
近年、水温上昇や気候変動の影響により種苗生産量が減少しており、安定供給体制の構築が業界全体の課題となるなか、品質と供給力を両立する一貫生産体制の確立を目指しています。

RAS施設の様子

トラウトサーモン池入れの様子

更に、本実証では当社独自のRAS設備確立も目的の一つです。現在、国内におけるRASの多くは海外製設備に依存しており、導入コストやメンテナンス時における部品調達、技術対応に時間を要する点が課題となっています。
この対策として機械事業と連携し、国内の高度な排水処理技術や設備ノウハウを活用することで、低コストかつ高い保守性を備えた国産のRAS開発を目指しています。これにより、養殖事業者にとって導入しやすい設備環境を整備し、国内外の養殖産業全体の発展にも貢献していきます。
今後は、本実証で得られた運用データや技術的知見をもとに、RASの標準化・パッケージ化を進め、外部への販売も検討していきます。政府の成長戦略においても陸上養殖は重要な成長分野の一つとして位置付けられており、更なる市場の拡大が期待されています。
生産した魚については、当面は地元流通を中心に販売を進め、将来的には国内市場に加え、需要拡大が見込まれるアジア市場への輸出も視野に入れ、販路の拡大に取り組んでいきます。

Regional revitalization through aquaculture

ブランド魚養殖事業の促進による地方創生
「いみずサクラマス」

ブランドロゴといみずサクラマス

近年、海洋環境の変化などの影響により、国産マスの漁獲量は減少傾向にあり、地域経済や食文化への影響が懸念されています。こうした課題に対し、当社グループは40年以上にわたり培ってきた養殖技術および種苗供給力を基盤に、持続可能な水産業の実現に取り組んでいます。
2025年10月には、富山県射水市および堀岡養殖漁業協同組合との三者間において、「いみずサクラマスの海上養殖事業の推進および地域活性化等に関する連携協定」を締結しました。本協定は地域のブランド魚である「いみずサクラマス」の安定供給体制の構築とブランド価値向上を図るとともに、官民連携によって地場産業の活性化による地方創生を目的としています。当社はこれまでも種苗供給を通じて同魚の生産に携わってきましたが、本協定を契機に更なる生産拡大や地域振興までを見据えた取り組みへと発展させていきます。

締結式の様子

また、同魚は上質な脂と鮮やかな柔らかい身を特長とする地域ブランド魚として、射水市内の飲食店で使用されているほか、地域の小学校における食育活動にも取り入れられるなど、地域社会に広く浸透しています。更に本事業の推進により、養殖規模の拡大に伴う雇用創出に加え、ブランド力向上による観光資源としての価値向上や関連産業の活性化など、多面的な地域創生への貢献が期待されます。
今年度は、海上いけす3基による養殖から開始し、養殖環境や需要動向および生産状況を踏まえ、段階的な事業拡大を進めていく予定です。将来的には、独自飼料の開発や、県内における種苗生産体制の構築にも取り組み、品質向上と差別化の強化を図ります。
国産マスの供給減少という市場環境を背景に、高品質な国産養殖魚への需要は高まっています。「いみずサクラマス」の希少性と品質の高さを強みに、地域とともに成長する持続可能な養殖業の構築と地域社会への価値創出に貢献していきます。