100年以上の歴史を歩んできたニチモウグループにとって「従業員」はなによりも重要な経営資源=「人財」として位置付けており、企業価値向上の源泉です。漁業・水産業を主たる事業領域としているニチモウグループの強みは各事業分野における専門性、独自性が挙げられます。その強みを支えているのは、従業員一人ひとりがステークホルダーを巻き込んで業務を遂行する力量です。
これらを踏まえた人材戦略は、第137期中期経営計画の基本構想にもある「浜から食卓までを網羅し繋ぐ」のベースとなる『人(従業員)をより強い個に成長させて繋ぐ』ことです。
具体的に求める人物像は、価値観の異なる相手とも協力していける“柔軟性”、新たなビジネスチャンスに果敢に挑戦する“チャレンジ精神”、最後までやり遂げる“タフネスさ”を兼ね備えた人材を育成していくことです。
この考え方は、従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮することで強い個を成長させ、その経験やノウハウを新たな価値を創造する事業に繋げて、中長期的な企業価値の向上、ひいては経営理念である「社会の公器」として業界を牽引していく未来へと繋いでいくということです。
現在
未来
階層別の教育に加え、現在の業務に必要な貿易、PCスキルなど専門的な教育を行っております。
また、e-ラーニングを用いた全従業員向けの教育機会の確保なども行っております。
VUCA※1時代においては、経済・ビジネス・個人のキャリアなどあらゆるものが複雑性を増し、将来予測が難しくなってきており、従前の経験が今後の課題解決には役立たない場合が想定されます。そのためにも従業員一人ひとりがスキルアップし成長(強い個)していくことが不可欠です。その施策として従業員に必要な能力を可視化するとともに、リスキリングを推し進め、事業を横断して活躍できる人材の育成に繋げてまいります。また、明確な育成プランを作成し、その進捗・達成状況を確認してまいります。
教育(リスキリング)
少子高齢化、働き方改革、新型コロナウイルス感染症など、ニチモウを取り巻く事業環境は大きく変わっています。そのような状況下で法令や時代のニーズに沿った育児・介護への対応、時差出勤制度の導入など、より良い労働環境の実現に努めております。また、従業員との対話やアセスメントなどを通じて問題、課題の洗い出しを行っております。
少子高齢化にともない、生産年齢人口の減少が顕著な国内において、より効率的な業務が遂行できる労働環境が必要になります。今後も選ばれる企業であるためにも、納得性の高い人事制度の導入、ジョブローテーションやグループ間交流により幅広い知見の習得など、新たな価値を創造できる労働環境の整備を行ってまいります。
労働環境
育児世代への休職制度、男性従業員の育児休職取得の推進などを積極的に進めております。
また、女性従業員の能力を発揮できる諸制度改定の検討を行っております。
生産年齢人口が減少していくなかで、企業の成長の観点においてもダイバーシティが重要な課題です。その中でも女性を主たる戦力として事業運営に組み込んでいく体制作りが重要になります。それに向けて、毎年の採用活動における女性採用率および女性管理職の比率を引き上げてまいります。
女性活躍
従業員の安全な労働環境の確保に努めるべく、産業医、看護師らの専門家と連携して、社員の心身の健康状態を把握し、問題のある場合には丁寧なフォローを行っております。また、労働時間管理システムにより長時間労働を未然に防止するなどの施策を行っております。
重要な経営資源である「人財」であり続けるために、従業員の健康維持・増進活動に対する積極的な支援と健康作りの施策を推進してまいります。健康管理についても体系的な運営を行い、「健康経営優良法人」の取得を目指してまいります。従業員の健康こそが企業価値を向上させ、「未来」へ繋がっていくものと考えております。
健康管理
強い個を事業・未来へ繋ぐ
強い個が団結し、強い組織の輪を
広げることで連携し、企業価値向上へ
「浜から食卓までを網羅し繋ぐ」を具現化する人材を育成するために、注力するポイントごとに区分けし、二つのSTAGEで中長期的な人材の育成を行ってまいります。
2022年秋に第一回の全社アセスメントを実施しました。アセスメントでは、自身の担当業務や、人間関係を含む身の回りの職場環境への満足度が高い等、従業員の所属部門レベルでのエンゲージメントの高さを確認できました。その一方で「全社ビジョンの共有」「業務の在り方」「人事評価制度」等に関する改善余地も確認され、具体的な改善対応を進めています。その他、アセスメントを通じ収集した従業員の声に対して、従業員満足度アップに向けた様々な施策に反映してまいりました。例えば、時差出勤制度の導入や、在宅勤務制度の検討、福利厚生(独身寮)の改善、賃金ベースアップ等です。今後も継続的にアセスメントを実施し、従業員意識の変化を観測すると共に、新たな施策の検討に役立ててまいります。
アセスメントを通じ、業務の進め方に関する課題を確認し、業務可視化の取組みを進めています。従業員への個別ヒアリング等を通じ事務業務の実態把握を進める中で、会社全体における改善余地が見えてきました。幅広い事業展開はニチモウグループの大きな特徴で、部門ごとに事業環境に合わせた業務の“個別最適化”が進められてきましたが、業務を全社レベルで平準化するといった“全体最適”の維持・推進が今後の課題となります。ニチモウグループはこれを「業務の属人化の解消」や「業務効率改善」の大きなチャンスであると捉えています。経営テーマである部門連携を業務においても推し進め、適正な役割分担の再考と、組織に横串を刺すシステムの導入により、全社レベルで業務の在り方を改革してまいります。
項目 | KPI | 進捗 | |
---|---|---|---|
1 | 人事上の情報、施策の可視化 | ISO30414の認証取得 |
|
2 | グループ全体としてのビジョン共有 | 理解度 100% |
|
3 | 人材定着、育成プランの作成 | 離職率 5%以下 |
離職率 1.8% ※単体実績
|
4 | ダイバーシティ | 女性採用比率 50% 女性管理職比率 10%以上 男性育児休暇取得率 100% |
女性採用比率 22.2%
女性管理職比率 0% 男性育休取得率 100% ※単体実績
|
社員インタビュー
「強い個」を育てること、個々をまとめあげて「強い組織」をつくることが、ニチモウの人材戦略です。人材戦略の現況と今後について語り合いました。
小島
ニチモウでは昔から、個人に権限を委譲し、それぞれの裁量で業務を進めてきました。他社と比べて知識や経験が蓄積されやすい環境があり、「強い個」が育ちやすいと思います。社員それぞれが個性を活かすためには、現場で吸収した知識や情報を持っていることが大事です。現場での経験がお客様に対する説得力に繋がります。また、「強い個」といっても本人主義という意味ではなく、それぞれの部門が大事にしていることや、品質・ブランドを常に意識しながら組織として動く必要があると思います。重要なのは、「強い個」を「強い組織」に繋げることです。
川俣
こうした職場環境は確かに特徴的です。ただ「個人商店化」してしまうことの弊害もありますね。「強い組織」になるには、個人の知識や経験を事業として継承していくことが必要です。
立川
個人が任されている業務をスムーズに引き継げることは、業務を効率的に進める上でも鍵を握ります。私は育休から復職した際に、異動した社員の業務を引き継いだのですが、丁寧な引き継ぎ書があり大変助かりました。デジタル化も進んでおり、いつでも引き継げるように業務を可視化しておくことは大切です。
小島
確かに。「個人商店化」の弊害をなくすには、自らが担う業務の整理整頓が必要です。業務が引き継げれば情報も共有できるし、まさに「強い組織」をつくることに繋がります。業務が可視化されることで、例えば営業事務を集約して、一つの部門をつくるといった発想も湧いてきます。
川俣
今はどこの会社でもそうかもしれませんが、人手不足が常態化する中で、業務のシステム化や、外部への業務委託も視野にいれた、業務効率や人員配置の最適化が求められています。業務の可視化が進めば、こうした判断もしやすくなりますね。
川俣
業務の整理ができるようになると、在宅ワークや女性の活躍、障がい者の活用といった、雇用を巡る様々な課題の解決にも繋がっていくと思います。水産業界の特質もあり、女性の活躍はまだ課題はありますが、まずは女性も長く働ける職場環境をつくることが重要ですね。
桔梗
そうですね。女性同士の話の中でも、「これからニチモウでどう働いていくか」ということが話題に上ります。立川さんのように、育児をされながら働き続けていらっしゃる方もいることは、非常に勇気付けられます。育児をしながら働くこと、結婚せずに仕事に打ち込むことなど、女性の働き方にもいくつかのロールモデルがあります。こうした事情も、職場の課題を検討する際にはぜひ考慮してほしいと思います。
立川
「女性活躍」という話の中では、育児との両立という点にフォーカスされることが多いのですが、身体的なことも含めて他にも課題はあります。女性の中でも、働くことに対する考え方は様々だと思います。職場の課題解決を考える際、まずは職場で女性が直面する課題のリストアップからはじめてはいかがでしょうか。
小島
女性に対する職場での配慮は本当に重要ですね。川俣さんが指摘されましたが、かつての水産業界は男性主体だったこともあり、女性を営業職として配属しても、お客様から受け入れられず、なかなか定着しないということもありました。近年はお客様も代替わりし、業界の様子も大きく変わっています。外部環境としては、女性も働きやすい職場になりつつあります。
川俣
業務の可視化が進んだことで、ニチモウの人材育成は次のステージに移っています。現在は、長期的な観点で人材に求める能力の明確化、新たな教育機会の提供、また評価制度の見直しについても、少しずつ動き出しています。DXの活用も業務の効率化や職場のペーパーレス化に不可欠であるという認識から、若手社員を中心とした検討会を設置しています。
立川
人事評価については、頑張った人にしっかり報いることのできる公平な人事制度をつくることと、つくりあげた人事制度を正しく運用していくことの2点に注力しています。まずは、上長と課員の双方が納得できる評価制度をつくることが先決です。また近年は雇用形態が多様化しており、それに伴って人事管理が煩雑化する面があるので、そこも改善したいと考えています。
川俣
立川さんとも話し合いながら、今まさに人事評価制度の整備を進めています。近年は業績が好調だったこともあり、評価についても業績に関する部分に偏りがちでしたが、業務のプロセスや考え方、行動などが評価されるように、人事評価の仕組みを変えようとしています。
川俣
方針がはっきりしている組織には、人が育つ土壌が生まれやすいと考えています。
上司も単に「稼いで来い」と号令をかけるのではなく、「良い商品を開発し、〇〇な市場に拡販する。そのために〇〇な部分に注力する」というような方針が共有されていく事が必要だと思います。また、個別の事業だけでなくグループ全体として利益を上げるために、俯瞰した視点の方針も重要になってくると思います。それがあってこそ、グループ全体が持続的に成長できるものと考えています。
小島
冒頭の議論にもありましたが、「強い個」を育成し、「強い組織」をつくりあげていくことで目指すものは「企業価値の向上」です。一義的には、売上を拡大し、利益を稼いで成長していくことが企業価値の向上に繋がるのですが、単に稼げばよいということではなく、人材としての価値を高めていくことも重要です。経験と知見を積み上げ・整理し・共有することで、個人、そして組織の価値を高めてほしいと思います。
立川
周りを見渡すと私より若手の社員も多くいて、気が付けば中堅社員のような立場になっているのですが、私自身は、こうした若手社員から学びを得たり、刺激を受けたりすることがたくさんあります。
若手社員が中心となって新しい風を起こすことは、企業にとっても非常に重要なことだと思います。こうした風が消されてしまうことのないよう、うまくフォローしていきたいと思います。
桔梗
若手社員だからできることは、確かにあると思っています。女性活躍や職場環境の改善といったことへの課題意識は、目の前の業務に追われる日々の中で薄れてしまいがちですが、ニチモウという会社の一人の社員として、常に課題意識を持ちながら業務に励みたいと、あらためて感じました。ニチモウが描く人材戦略の考え方もよく理解できました。私にも後輩社員ができるので、あらためて自分の業務の内容を整理整頓し、いつでも共有できるようにしておきたいと思います。